Antonio Alonso REVIEW
オービック・スペシャル・コンサート 2002「スペインの夜」 3月15日(金)東京・溜池山王 サントリーホール大ホール

音楽の殿堂サントリーホールに、華麗なフラメンコ絵巻が出現した。 「スペインの夜」と銘打たれた華やかなコンサートの後半の目玉として、アントニオ・アロンソ振付・演出による「カルメン」が演じられたのだ。
この夜用いられた音楽はビゼーラのオペラの原曲と、現代ロシアの作曲家シチェドリンによる編曲を混ぜたもの。 アロンソ夫人で気悦のソプラノとして活躍する塩田美奈子が、カルメンを演じた。 印象的なイントロダクションとともに、舞踊団の面々が登場。響きのよいサントリーホールいっぱいに、よく音楽と溶け合ったサパティアードがこだまする。 ドン・ホセとエスカミーリョの2役を演じるアロンソは、その後悠々とステージに現れた。 かつてスペイン国立バレエ団のトップとして鳴らしただけあって、こうしてオペラティックな舞台に立つと、その容姿と舞踊はひときわ見映えがする。 対する塩田も、軽くブラセオを入れたり、巧みにカスタネットを操ってみせたりと、随所にフラメンコ的な所作を織り込んでムードを高めていた。 「ジプシーの歌」と続く「トレロ」は、群舞の見せ場。アロンソ以下3人の男性が闘牛士に扮して、みごとなカポーテさばきを見せると、会場から大きな拍手が湧いた。
全体的にアロンソ流の美学に貫かれたドラマは、最後のドン・ホセによるカルメン殺しの場でクライマックスを迎えた。 ホセの独唱部分はおもにチェロが代わってメロディーを奏で、それがアロンソの動きとうまく符合して、カルメンへの報われぬ愛が殺意に変わるさまをよく表していた。